公務員の転職先は「どこがおすすめか」では決まりません。姉妹サイトの公務員転職データベースに集まっている305件を集計すると、行き先は事務・総務から経営企画、コンサルタント、技術職まで広く散らばっていました。決め手になっているのは職種の人気ではなく、いまの所属・年代・担当してきた仕事の中身の3つです。この記事では、その3つをどう順番に当てはめるかを実データで整理します。
公務員はどこへ転職していますか?
特定の職種に集中してはいません。公務員転職データベースの事例305件では、転職後の職種は次の順に多くなっています。
| 順位 | 転職後の職種 | 件数 |
|---|---|---|
| 1 | 事務・バックオフィス | 29件 |
| 2 | 総務 | 27件 |
| 3 | 経営・事業企画 | 23件 |
| 4 | コンサルタント | 22件 |
| 5 | 経理 | 15件 |
| 5 | 大学職員 | 15件 |
| 7 | 法務/渉外担当/法人営業/施工管理・技術職 | 各14件 |
業界では教育41件、IT・SaaS40件が並び、コンサル26件、人材26件、金融25件、医療・福祉25件と続きます。上位に来る職種には共通点があります。事務・総務・企画・経理は、いずれも「組織の仕組みを回す仕事」です。公務員の行政職がやってきたことと構造が近く、経験の説明がつなげやすい領域です。
同じ305件で、転職時の平均年齢は33.2歳、305件のうち237件(78%)が未経験職種への転職でした。年収は上がった154件、下がった113件、変わらない38件で、平均すると約28万円のプラスです。
転職先は何で決まりますか?
事例を並べて見えてくるのは、次の3つが順番に効いているということです。この順番を飛ばして「おすすめの職種」から探すと、選考で説明が続かなくなります。
- 所属|市役所か県庁か国家か、教員か公安職か。ここで行き先の傾向がはっきり分かれます
- 年代|同じ経歴でも、動く年齢で年収の結果が反転します
- 担当してきた仕事の中身|「公務員」ではなく「何を何年やったか」が評価対象です
順に見ていきます。
所属によって転職先の傾向は違いますか?
はっきり違います。同じ「公務員」でも、扱ってきた仕事が違えば民間での売り方が変わるためです。事例の所属別内訳と、それぞれの傾向は次のとおりです。
| 所属 | 件数 | 読み取れる傾向 |
|---|---|---|
| 市役所・区役所 | 68件 | 人事・総務・事務など「社内の仕組みを回す仕事」が上位 |
| 都道府県庁 | 44件 | 採用区分で結果が分かれる。技術系は年収が大きく上がる |
| 専門職 | 37件 | 資格・専門領域がそのまま 民間での武器になる |
| 国家公務員 | 34件 | 年代で結果が反転。40代以上は下がる方が多い |
| 教員 | 25件 | 教育業界と、対人・育成の職種へ |
| 消防/自衛隊/警察 | 各21・20・20件 | 公安職は年収が下がりやすい。金融が最大の受け皿 |
それぞれの詳しい分布と実際の事例は、所属ごとに分けて整理しています。自分の所属のものから読んでください。
- 市役所から転職するなら?実際の転職先と向いてる仕事
- 県庁から転職するなら?実際の転職先と採用区分ごとの違い
- 国家公務員の転職先は?年代で結果が変わる理由と実際の事例
- 教員から転職するなら?実際の転職先と年収の現実
- 警察官から転職するなら?実際の転職先と年収の現実
何歳で動くかで、結果はどれくらい変わりますか?
年収に関しては、所属より年代のほうがはっきり出ます。305件を5歳刻みで分けると、きれいな山の形になりました。
| 年齢 | 件数 | 上/下/同 | 年収の平均変化 | 転職前の平均年収 | 満足度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 34件 | 14/14/6 | +13万円 | 414万円 | 3.47 |
| 25〜29歳 | 80件 | 48/20/12 | +38万円 | 479万円 | 3.86 |
| 30〜34歳 | 74件 | 52/11/11 | +67万円 | 540万円 | 4.01 |
| 35〜39歳 | 51件 | 27/22/2 | +38万円 | 606万円 | 3.80 |
| 40〜44歳 | 38件 | 8/23/7 | -14万円 | 678万円 | 3.58 |
| 45歳以上 | 28件 | 5/23/0 | -52万円 | 763万円 | 3.21 |
30〜34歳が最も条件が良く、転職満足度も4.01と最高でした。そして40歳を境に、平均が初めてマイナスに転じます。45歳以上では28件中23件で年収が下がっていました。
理由は右から2列目に出ています。年齢が上がるほど、転職前の年収そのものが高くなっています。45歳以上の平均は763万円です。これを民間で同額から始めるには、その額に見合う専門性を単独で示す必要があります。上がるか下がるかは能力の差というより、比較の起点がどこにあるかで決まっている面が大きいということです。
年代別の詳しい中身は30代の公務員が民間へ転職するには?前半と後半で変わる現実にまとめています。
未経験の職種にも移れますか?
移れています。305件のうち237件、78%が未経験職種への転職でした。公務員からの転職では、未経験のほうがむしろ多数派です。
| 件数 | 年収が上がった | 平均変化 | 満足度 | |
|---|---|---|---|---|
| 未経験の職種へ | 237件 | 114件(48%) | +22万円 | 3.70 |
| 経験のある職種へ | 68件 | 40件(59%) | +48万円 | 3.91 |
差はありますが、「未経験だから無理」という結果にはなっていません。未経験でも半分近くが年収を上げています。ただし条件面では、経験が続く方向へ移ったほうが有利です。同じ分野に立場を変えて関わる、という選び方が最も条件が良くなりやすい形でした。
転職先はどう選べばいいですか?
事例から読み取れる順序は次のとおりです。求人を見るのは最後です。先に求人を見ると、選ぶ基準がないまま条件だけで比べることになります。
- いまの年収を手当込みで出す。地域手当・住居手当・扶養手当・共済の掛金まで含めた総額。ここが全ての比較の起点になります
- いくらまでなら下がっても成立するかを決める。年代によっては下がる前提が現実的です
- 自分で最初から最後まで回した仕事を3つ書き出す。金額・件数・期間を添えます
- その経験を必要としている業界を1つ決める。幅広く探すより、担当分野に関係する業界のほうが条件が良くなります
- そこではじめて求人を見る。複数社から内定を得られる状態を作ってから決めます
3番目でつまずく場合、多くは経験がないのではなく、書き方が分からない状態です。民間で評価される言い換えの型は公務員から転職するときの強みは?民間で評価される7つの経験に、部署別の棚卸しは公務員経験を活かせる仕事は?部署別にみる民間での使いどころにまとめています。
注意点|転職先を決める前に知っておくこと
ランキングで選ぶと、自分の経歴と噛み合わない
この記事の最初に出した職種の順位は、「どこが良いか」ではなく「実際に多かった順」です。1位の事務・バックオフィスが29件なのに対し、全体は305件。上位10職種を足しても半分程度にしかなりません。行き先はそれだけ散らばっています。順位の上から選ぶ意味は薄い、というのがこのデータの読み方です。
提示年収の差は、手取りの差ではない
公務員の給与は各種手当と共済で構成されています。事例には、提示額の差を60万円と見ていたのに実際は88万円下がったという記録がありました。額面だけを比べると読み違えます。退職金の積み上がり方も別に確認が必要です。
内定1社で決めない
年収が大きく下がった事例には「唯一の内定だったので他を見ずに決めた」という共通点がありました。比較する材料がないまま条件を受けると、あとから交渉の余地がなくなります。在職中であれば、時間は自分の側にあります。
よくある質問
公務員におすすめの転職先はどこですか?
全員に共通する「おすすめ」はありません。事例305件で最も多いのは事務・バックオフィス(29件)ですが、全体の1割にも届きません。おすすめは所属と担当分野で変わります。技術職なら施工管理や建設コンサルへ、許認可担当ならその業界の事業者側へ、情報系ならIT企業へ、というように、これまでの仕事から決まっています。
公務員から転職すると年収は下がりますか?
305件では上がった154件、下がった113件、変わらない38件で、平均は約28万円のプラスです。ただし年代で結果が反転します。30代前半までは上がる人が多数派ですが、40歳以上では66件中46件で下がっていました。「上がるか」より「いまの年収からいくら動くか」で考えるほうが実態に合います。
公務員の転職先ランキングはありますか?
この記事の職種一覧が、実際の件数にもとづく分布です。ただし前述のとおり、上位10職種を足しても全体の半分程度で、残りは広く散らばっています。ランキング上位=自分に合う、ではありません。順位より、自分の所属と担当分野の欄を見るほうが役に立ちます。
何歳までなら転職できますか?
事例には45歳以上の転職も28件あります。年齢だけで不可能になるわけではありません。ただし40歳を境に、年収は下がるほうが多数派になります。45歳以上では28件中23件が減収でした。動けるかどうかより、下がる前提を受け入れられるかどうかが判断の分かれ目になります。
転職先が思いつきません。何から始めればいいですか?
求人サイトを見ても決まりません。まず自分の適性の方向をつかんでから、該当する所属別の記事を読むのが早い順序です。辞めるかどうかから迷っている段階なら、公務員を辞めたいけど転職先がわからない人へで考える順序を整理してください。
「そもそも自分に合う行き先が無い気がする」という段階なら、公務員は転職先がない?305件の行き先と「無い」と感じる3つの理由で原因のほうを先に外してください。公安職では自衛官から転職するなら?20件で見た職種区分による分かれ方もあわせて確認できます。
そもそも自分にどんなスキルがあるか分からない場合は、公務員のスキルとは?人事院の57項目と転職で評価された経験304件から確認してください。

コメント