県庁から民間へ転職した人が、実際にどこへ移っているのか。姉妹サイトの公務員転職データベースに集まっている都道府県庁の事例40件を見ると、転職後の職種は多い順にコンサルタント、法人営業、経理、施工管理・技術職でした。そして市役所からの転職と決定的に違う点が1つあります。採用区分(行政・土木・建築・情報など)によって、結果がはっきり分かれます。この記事では、その分かれ方を実データと事例で整理します。
県庁職員はどこへ転職していますか?
特定の業界に集中してはいません。姉妹サイト公務員転職データベースの都道府県庁の事例40件では、転職後の職種は次の順に多くなっています。
| 順位 | 転職後の職種 | 件数 |
|---|---|---|
| 1 | コンサルタント | 5件 |
| 2 | 法人営業 | 4件 |
| 2 | 経理 | 4件 |
| 2 | 施工管理・技術職 | 4件 |
| 5 | 大学職員 | 3件 |
| 5 | 事務・バックオフィス | 3件 |
| 5 | 総務 | 3件 |
| 5 | 経営・事業企画 | 3件 |
業界で見ると、医療・福祉が8件で最も多く、コンサル5件、建設・インフラ5件、商社4件、教育4件と続きます。同じデータで転職時の平均年齢は34.2歳、平均の公務員歴は11.6年でした。40件のうち25件が未経験職種への転職です。
市役所からの転職と比べると、コンサルタントと施工管理・技術職の比率が高いのが県庁の特徴です。県は広域の計画やインフラを扱うため、そこで積んだ経験がそのまま専門職として値段のつく領域に接続しています。
県庁から転職すると年収は上がりますか?
全体では上がる人のほうが多い、というのが実際の分布です。ただし「県庁だから上がる」のではなく、採用区分によって結果が大きく違います。まず全体の分布から見てください。
| 年収の変化 | 件数 |
|---|---|
| 上がった | 23件 |
| 下がった | 10件 |
| 変わらない | 7件 |
40件の平均では約50万円のプラスです。これを公務員時代の採用区分ごとに分けると、平均額が正反対の方向に振れます。
| 採用区分 | 件数 | 上/下/同 | 年収の平均変化 |
|---|---|---|---|
| 建築 | 3件 | 3/0/0 | +153万円 |
| 土木 | 4件 | 3/0/1 | +145万円 |
| 情報 | 3件 | 3/0/0 | +83万円 |
| 行政 | 23件 | 14/6/3 | +40万円 |
| 学校事務 | 3件 | 0/2/1 | -10万円 |
| 福祉 | 3件 | 0/2/1 | -62万円 |
技術系の3区分(建築・土木・情報)は、この40件の中で1件も年収が下がっていません。一方、福祉と学校事務は上がった例がありませんでした。行政職はその中間で、上がった人と下がった人の両方がいます。
ただし行政職以外は各3〜4件しかありません。母数が小さいので、確定した法則ではなく傾向の目安として読んでください。それでも方向がここまで揃うのには理由があります。次で説明します。
採用区分ごとに、県庁の経験はどう評価されますか?
評価のされ方が変わるのは、民間側に「同じことができる人」がどれだけいるかが区分ごとに違うからです。代わりがいない経験ほど値段がつきます。
土木・建築|発注者側の経験がそのまま専門性になる
県は道路・河川・砂防・都市計画といった広域のインフラを扱います。その計画と設計監理を担当した経験は、建設コンサルタントやデベロッパーの側に直接の需要があります。国と県の基準を両方理解していること、災害時に判断した経験、権利変換や事業認可の実務は、民間で一から育てるのが難しい領域です。
この区分は、事例を見ると40代でも年収が上がっています。年齢よりも、担当した事業の規模と種類が判断材料になっているためです。
情報|自分で開発していなくても評価される
庁内システムの企画、統計調査の設計、情報政策の立案などがこれにあたります。コードを書いていなくても、要件を決める側・品質を担保する側だった経験は評価対象です。データの規模や、扱った業務の複雑さを説明できるかが分かれ目になります。
行政|「何を調整したか」まで書けるかで結果が変わる
最も人数が多く、結果のばらつきも最も大きい区分です。予算編成、条例改正、補助金の執行、事業者との協定、住民説明といった経験そのものは強いのですが、「調整しました」で止まると評価につながりません。誰と誰の利害を、どういう条件で合わせたのか。動いた金額はいくらか。ここまで書けた人が、事例の中では年収を上げています。
行政職の棚卸しの手順は公務員経験を活かせる仕事は?部署別にみる民間での使いどころで部署別に整理しています。
福祉・学校事務|移りやすいが、収入は下がりやすい
この2区分の転職先は、医療法人・社会福祉協議会・大学など公的な性格の近い組織に集中しています。仕事の進め方が県庁時代と近く、経験の説明もしやすいぶん、移りやすい領域です。
ただし移りやすさと収入は別の話です。近い組織ほど給与水準も公務員に近いか、それ以下になります。事例では、40代後半で100万円以上下がったケースがありました。この区分で動くなら、収入がいくらまでなら成立するかを先に決めておく必要があります。
県庁からの実際の転職事例
ここからは実際の事例です。いずれも姉妹サイトに掲載されている記録で、要点と、そこから読み取れることを添えています。詳細は各リンク先で確認できます。
43歳・土木職から建設コンサルタントの計画部門へ(630万円→810万円)
砂防課で土砂災害対策の計画と、災害復旧事業の設計監理を20年担当。転職理由は「20年で技術の中身は積み上がりましたが、管理職として現場から離れることが確実になっていました。40代前半なら技術者として動けると判断しています」。応募18社で書類通過は4社と多くありませんが、通った4社のうち3社から内定が出ています。活動期間は2ヶ月でした。
読み取れること:技術職の選考は書類の通過率は低くても、通れば決まりやすいという形になりがちです。応募数を増やすより、経験が合う会社に絞るほうが機能します。(事例の詳細)
38歳・土木職から不動産デベロッパーの開発企画へ(600万円→820万円)
都市整備部で市街地再開発事業を15年担当し、権利変換や事業計画の認可に携わってきました。「再開発の認可をする立場で15年やってきましたが、事業を自分で組み立てたことは一度もありません。40歳を前に、つくる側で勝負したい」。応募14社で全社の書類が通過し、3社から内定。「専門性が明確だと選考は驚くほど速く進みます」と語られています。
読み取れること:許認可する側の知識は、許認可を受ける側の企業にとって価値になります。制度を熟知した人材は民間側で不足しており、同じ制度の反対側に立つ転職は経験が丸ごと使えます。(事例の詳細)
31歳・行政職から経営コンサルティングファームへ(528万円→620万円)
総務部門で予算編成や条例改正の実務、各部局からの照会対応を担当。評価されたのは「関係者の利害が異なる中で調整案をまとめた経験と、限られた予算の中で優先順位をつけて配分してきた経験」でした。応募16社、書類通過8社、内定2社。未経験職種への転職です。
読み取れること:本人のアドバイスが要点をついています。「転職エージェントには、誰の利害をどう調整したかまで具体的に伝えると、書類の通過率が上がると思います」。(事例の詳細)
29歳・行政職から商社の法人営業へ(460万円→590万円)
環境部で再生可能エネルギーの導入促進と、事業者との協定締結を7年担当。「協定は結べても、事業として回すのは民間です。7年やって、エネルギー事業そのものを動かす側に立ちたいと考えました」。転職先は再エネ事業部で、制度と事業者の両方を知る点が評価されました。担当した事業の発電規模を数字で示して活動しています。
読み取れること:行政職でも、特定分野の制度知識を持っていれば専門職に近い扱いになります。「県庁の行政職」ではなく「再エネ制度の実務者」として売る、という組み立てです。(事例の詳細)
48歳・福祉職から社会福祉協議会の管理部門へ(760万円→640万円)
健康福祉部で地域福祉計画の策定と市町村支援を25年担当。「40代のうちなら受け入れ先があると聞き、49歳になる前に動いています」。応募12社に対し書類通過は3社、内定1社。活動期間は6ヶ月でした。年収は120万円下がっています。
読み取れること:本人の言葉がそのまま結論です。「40代後半は年収が大きく下がります。動くなら40代前半のうちが有利です」。ただしこの方は「60歳以降も働ける道筋ができたので、長い目では納得しています」とも語っています。何を優先するかで評価は変わります。(事例の詳細)
都道府県庁からの事例は全部で40件あります。年齢・公務員時代の職種・転職後の職種から絞り込めるので、自分に近い経歴を探すなら公務員転職データベースの都道府県庁の事例一覧が使えます。
県庁からの転職が向いているのはどんな人ですか?
事例に共通しているのは、「県庁で何をしたか」を自分の言葉で説明できる状態になっている人です。具体的には次のような人が、結果として年収も満足度も上げています。
- 技術職で、担当した事業の規模・種類を具体的に説明できる人。土木・建築・情報は40代でも需要があります
- 特定分野の制度に詳しい行政職。医療、環境、再エネ、都市計画など、その制度を相手にする企業があります
- 「認可する側」から「認可を受ける側」へ移る発想ができる人。同じ制度の反対側は、経験が最も活きる場所です
- 金額・件数・規模を数字で持っている人。削減した維持費、動かした事業費、発電規模など、数字は職種を越えて通じます
逆に、異動の幅が広く「これが専門」と言いにくい状態のまま動くと、選考が長引きやすくなります。その場合は何から棚卸しすべきかを公務員から転職するときの強みは?民間で評価される7つの経験で先に確認してください。
注意点|県庁から転職する前に知っておくこと
提示年収だけで比べると読み違える
県庁の給与には地域手当・住居手当・扶養手当が含まれ、共済の掛金や退職金の積み上がり方も民間とは異なります。事例の中には、提示額の差は60万円ほどのつもりが、実際の落ち込みは88万円だったという記録があります。比べるなら手当と共済を含めた総額で比べてください。
採用区分によって求人の数が違う
技術職は求人数そのものが少なくても、合う会社に当たれば決まります。逆に行政職は応募先の幅が広いぶん、どこに出すかを決めないまま数を打つと通過率が落ちます。事例では、書類通過率は応募先を絞った人のほうが高くなっていました。
内定1社で決めない
年収が大きく下がった事例では、「唯一の内定だったので他を見ずに決めた」という共通点がありました。比較する材料がないまま条件を受けると、あとから交渉の余地がなくなります。急ぐ事情がある場合ほど、この点は意識しておいてください。
よくある質問
県庁と市役所では、転職のしやすさは違いますか?
難易度そのものより、行き先の傾向が違います。市役所は人事・総務・事務など「社内の仕組みを回す仕事」が上位に来るのに対し、県庁はコンサルタントと施工管理・技術職の比率が高くなります。県のほうが広域計画やインフラを扱うぶん、専門職としての売り方がしやすい傾向です。市役所側の分布は市役所から転職するなら?実際の転職先と向いてる仕事にまとめています。
県庁の技術職は40代でも転職できますか?
事例では40代前半で年収を上げている記録が複数あります。43歳・46歳・41歳の土木/建築職が、いずれも年収を上げて建設コンサルタントや施工管理へ移っていました。判断材料になっているのは年齢よりも担当した事業の規模と種類です。ただし40代後半になると、区分を問わず求人が絞られる点は事例からも読み取れます。
県庁の行政職は、専門性がないと言われませんか?
「行政職」というくくりのままだと、たしかに説明が難しくなります。事例で評価されているのは職種名ではなく担当分野です。医療政策、環境・再エネ、都市計画、行政改革といった分野に何年関わったかで語ると、その分野を相手にする企業には専門職として伝わります。
県庁からの転職で、年収が下がりやすいのはどんな場合ですか?
事例の40件では、40代後半であることと公的な性格の近い組織(医療法人、社会福祉協議会、大学など)へ移ることが重なると下がりやすくなっていました。この2つは仕事の連続性が高い選択でもあるため、収入と継続性のどちらを取るかという判断になります。
自分がどの仕事に向いているか分からない場合はどうすればいいですか?
どの区分にいても、最初の壁は「自分の経験がどこで通じるか分からない」ことです。まず候補の方向をつかむなら、公務員から転職するなら?向いてる仕事の選び方で選び方の順序を確認するか、下の適職診断で当たりをつけてから調べるほうが早く進みます。
国家公務員の場合は、採用区分より年代で結果が分かれます。比較するなら国家公務員の転職先は?年代で結果が変わる理由と実際の事例もあわせて確認してください。
所属をまたいだ全体像は公務員の転職先はどう選ぶ?305件のデータで見る現実と選び方にあります。

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