市役所から民間へ転職した人は、実際にどこへ移っているのか。姉妹サイトの公務員転職データベースに集まっている市役所・区役所の事例56件を見ると、多い順に人事、経営・事業企画、事務・バックオフィス、総務、カスタマーサクセスでした。この記事では、その傾向と、市役所のどの経験がどの仕事につながるのかを、実際の事例つきで整理します。
市役所職員はどこへ転職していますか?
特定の業界に集中しているわけではありません。姉妹サイト公務員転職データベースの市役所・区役所の事例56件では、転職先の職種は次の順に多くなっています。
| 順位 | 転職後の職種 | 件数 |
|---|---|---|
| 1 | 人事 | 6件 |
| 2 | 経営・事業企画 | 5件 |
| 3 | 事務・バックオフィス | 5件 |
| 4 | 総務 | 5件 |
| 5 | カスタマーサクセス | 4件 |
同じデータで、転職時の平均年齢は30.9歳、平均の公務員歴は8.6年でした。新卒で入って8年前後、30歳前後で動いている人が中心という分布です。
なお、同じ公務員でも教員は傾向が大きく違います。教育業界の中へ移る人が多く、年収は下がるケースのほうが多くなります。詳しくは教員から転職するなら?実際の転職先と年収の現実で整理しています。
上位に並ぶ職種には共通点があります。人事・総務・事務・企画は、いずれも「社内の仕組みを回す仕事」です。市役所の行政職がやってきたことと構造が近く、経験の説明がつなげやすい領域だと言えます。
市役所から転職すると年収は上がりますか?
上がる人のほうが多い、というのが実際の分布です。前述の一覧ページに表示されている20件の年収変化を数えると、次のようになりました。全56件ではなく一覧に出ている20件を数えた結果である点にご注意ください。
| 年収の変化 | 件数 |
|---|---|
| 上がった | 13件 |
| 下がった | 5件 |
| 変わらない | 2件 |
ただし、上がり方には偏りがあります。大きく上がっているのは、技術職・コンサル・ITなど専門性が値段になる分野へ移った人です。土木職から不動産の事業企画へ移った例では560万円から750万円、行政職からコンサルへ移った例では510万円から690万円になっています。
一方、事務・総務・バックオフィスは横ばいから微増にとどまる傾向です。仕事の進め方が公務員時代と近く移りやすいぶん、収入の跳ね方は小さくなります。どちらを取るかは、何のために転職するのかによって変わります。
市役所の業務経験は、民間のどのスキルにあたりますか?
市役所は異動の幅が広いぶん、担当してきた課によって話が変わります。「市役所職員」ではなく「どの課で何をしたか」で棚卸しするところから始めてください。
| 市役所での担当 | 民間での呼び方 | つながりやすい職種 |
|---|---|---|
| 財政課での予算査定 | 予算策定・予実管理 | 経営企画/経理・財務 |
| 人事課での制度設計・研修 | 人事制度の設計、研修体系の構築 | 人事/人材 |
| 契約検査課での入札・検査 | 調達、契約審査、ベンダー管理 | 事務・バックオフィス/購買 |
| 情報政策課でのシステム導入 | システム導入支援、社内教育 | カスタマーサクセス/社内SE |
| 産業振興課での企業支援 | 取引先開拓、イベント運営 | 事業企画/法人営業 |
| 生活支援課でのケースワーク | 顧客ヒアリング、課題整理 | カスタマーサクセス/人材 |
| 土木・建築での工事監督 | 発注者側での工程・品質管理 | 施工管理/不動産開発 |
| 窓口・住民記録での手続き処理 | 大量処理のオペレーション | 事務センター/カスタマーサポート |
部署別のより詳しい変換は公務員経験を活かせる仕事は?部署別にみる民間での使いどころにまとめています。
市役所からの実際の転職事例
ここからは実際の事例です。いずれも姉妹サイトに掲載されている記録で、要点と、そこから読み取れることを添えています。詳細は各リンク先で確認できます。
30歳・産業振興課からメーカーの事業企画へ(450万円→560万円)
地場企業の販路拡大支援と展示会の取りまとめを8年担当。転職理由は「支援はできても、実際に売るのは企業です。自分が事業を動かす側に立ちたいと考えるようになりました」。地場企業のネットワークと展示会運営の実務が評価されました。活動期間4ヶ月、応募21社、内定2社。
読み取れること:企業支援の部署は、支援した側の経験がそのまま事業側の武器になります。「調整した」ではなく「何社と、どんな案件を動かしたか」を数えられる点が強みです。(事例の詳細)
36歳・情報システム課からIT企業のQAエンジニアへ(570万円→660万円)
基幹システムの更改で、受入テストの計画と実施を統括。「住民の生活に直結するシステムで、不具合を出せない前提のテストを設計してきた」経験が評価されました。転職の動機には働き方の見直しもあり、「子どもが小さく、庁内の繁忙期は帰宅が遅くなる一方でした」と語られています。未経験職種への転職です。
読み取れること:情報系の部署は、発注者側の経験がそのまま専門性になります。自分で開発していなくても、品質を担保する立場だった経験は評価対象です。(事例の詳細)
42歳・人事課から人材会社の人事へ(660万円→680万円)
公務員歴19年、人事制度の設計と職員研修の体系づくりを担当。「40代で動くのは遅いと言われましたが、人事一筋という専門があれば話は別でした」。応募18社で内定2社、未経験ではない転職です。
読み取れること:40代でも、同じ職種を続けてきた場合は年齢のハンデが小さくなります。逆に言えば、幅広く異動してきた人が40代で職種を変えるのは難易度が上がります。(事例の詳細)
34歳・契約検査課から商社の事務・バックオフィスへ(530万円→530万円)
工事と物品の入札を担当し、契約書の審査と検査業務を統括。転職理由は異動でした。「役所では数年ごとに全く違う分野へ異動します。せっかく積んだ専門が次の異動で途切れることが分かっていて、専門を続けられる場所へ移りました」。商社の契約管理職として、入札と契約審査の経験を直接活用しています。
読み取れること:年収は変わっていません。この転職の目的は収入ではなく専門性を途切れさせないことでした。何のために動くのかが定まっていると、選ぶ基準もぶれません。(事例の詳細)
35歳・情報政策課からIT企業のカスタマーサクセスへ(560万円→560万円)
庁内システムの導入支援と各課への操作研修を担当。「導入した後に定着させる仕事こそが本質」と感じたことが転職理由です。転職先は自治体向けサービスの担当部署で、庁内システム導入の実績とITに不慣れな職員への教育経験が評価されました。転職後については「解約率という形で結果が毎月出ます。役所には無かった緊張感です」と語られています。
読み取れること:自治体を顧客とする企業では、役所の内部を知っていること自体が価値になります。業界を選べば、公務員経験は直接の実績として扱われます。(事例の詳細)
市役所・区役所からの事例は全部で56件あります。所属・年齢・転職後の職種から絞り込めるので、自分に近い経歴を探すなら公務員転職データベースの市役所・区役所の事例一覧が使えます。
注意点|市役所から転職する前に知っておくこと
年収が下がる場合がある
上の事例は上がったものと横ばいのものが中心ですが、下がる例もあります。27歳・生活支援課のケースワーカーから医療・福祉のカスタマーサクセスへ移った事例では、年収が449万円から420万円へ29万円下がりました。本人は理由をこう説明しています。「市の住居手当がなくなった分がそのまま効いています」。
基本給だけを比べると見誤ります。住居手当、扶養手当、地域手当を含めた総額で比較してください。(事例の詳細)
異動の幅広さが専門性の説明を難しくする
市役所は数年ごとに分野の違う部署へ移ります。幅広い経験は強みでもありますが、「何の専門家か」を一言で言えない状態にもなりがちです。書類を書く前に、いちばん長く担当した業務か、複数部署で共通していた動き方のどちらかを軸に決めておいてください。
成果が毎月数字で返ってくる
上の事例にあった「解約率という形で結果が毎月出ます」は、多くの人が最初に感じる変化です。年度単位で動く職場から、月次・四半期で評価される職場への移行になります。ここが合うかどうかは、職種選びより先に確かめておいたほうがよい部分です。
市役所に戻るのは簡単ではない
経験者採用の枠はありますが、自治体ごとに年齢制限や実施時期の制約があります。「合わなければ戻ればいい」という前提では動かないほうが安全です。
よくある質問
市役所から民間に転職できますか?
できます。姉妹サイトには市役所・区役所からの事例が56件あり、人事、事業企画、事務、総務、カスタマーサクセスなど幅広い職種へ移っています。ただし「市役所職員だから」で通るわけではなく、担当してきた業務を民間の言葉に置き換えられるかで結果が分かれます。
市役所職員の転職先で多いのはどこですか?
職種では人事、経営・事業企画、事務・バックオフィス、総務、カスタマーサクセスの順です。いずれも社内の仕組みを回す仕事で、行政職の経験と構造が近い領域です。
何歳までに動いたほうがいいですか?
掲載事例の平均転職年齢は30.9歳、平均の公務員歴は8.6年です。ただし42歳で人事へ移った事例もあり、年齢そのものより「一つの職種を続けてきたかどうか」の影響が大きい傾向が見えます。職種を変える転職ほど、早いほうが有利になります。
行政職で専門性がなくても転職できますか?
できます。事例の多くは行政職です。専門性は資格や職種名だけを指すのではなく、「制度を読んで運用に落とす」「関係者を集めて合意を取る」といった動き方の一貫性でも示せます。
市役所での経験がまったく評価されない職種はありますか?
評価されにくいのは、売上を直接つくった経験が要件になる職種です。成果報酬型の営業や、実務経験年数が必須要件の専門職などが該当します。求人票の必須要件を先に確認して、応募先を絞るほうが早く進みます。
まとめ
市役所からの転職先は、人事・企画・事務・総務・カスタマーサクセスに多く分布しています。動き方は3つです。
- 「市役所職員」ではなく、担当した課の業務単位で棚卸しする
- いちばん長く担当した業務か、共通していた動き方を軸に決める
- 年収は手当込みの総額で比較する
そのうえで、働く環境が自分に合っているかは別に確かめる必要があります。判断の軸は公務員から転職するなら?向いてる仕事の選び方で整理しています。
県庁になると分布が変わり、採用区分によって結果が大きく分かれます。実データは県庁から転職するなら?実際の転職先と採用区分ごとの違いで整理しています。
所属をまたいだ全体の分布は公務員の転職先はどう選ぶ?305件のデータで見る現実と選び方にまとめています。

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