「公務員には転職先がない」と言われます。潰しが利かない、民間で通じる技術がない、と。ただ姉妹サイトの公務員転職データベースに集まっている305件を見ると、行き先は21の職種、14の業界に散らばっていました。最も多い職種でも29件、全体の1割に届きません。選択肢が無いのではなく、散らばっていて見えにくいというのが実際のところです。この記事では「無い」と感じる原因と、行き先の見つけ方を整理します。
公務員に転職先が無いのは本当ですか?
データで見るかぎり、無いという結果にはなっていません。事例305件の転職後の職種は、次のように分布しています。
| 順位 | 転職後の職種 | 件数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 1 | 事務・バックオフィス | 29件 | 9.5% |
| 2 | 総務 | 27件 | 8.9% |
| 3 | 経営・事業企画 | 23件 | 7.5% |
| 4 | コンサルタント | 22件 | 7.2% |
| 5 | 経理/大学職員 | 各15件 | 各4.9% |
1位でも1割に届きません。上位10職種を足しても全体の半分程度で、残りは21分類に広く散らばっています。業界も教育41件、IT・SaaS40件を筆頭に14分類に分かれていました。
そして305件のうち237件、78%が未経験職種への転職です。「経験がないと入れない」という前提も、この分野には当てはまっていません。
では、なぜ「転職先がない」と感じるのですか?
事例を読むと、原因は3つに絞られます。いずれも求人の数の問題ではなく、探し方の問題でした。
1. 職種名から探している
「公務員 転職先」で検索して出てくる職種一覧から選ぼうとすると、どれもピンときません。当然で、行き先は職種の人気ではなく、担当してきた仕事から決まっているからです。入札事務の人は自治体向けSaaSの営業へ、統計担当はコンサルへ、情報教育担当は大学の情報システム課へ。事例はすべてこの形です。
2. 最初に相談した窓口の答えを、市場の答えだと思っている
これは複数の事例に共通して出てきます。警察官の方は「総合型のエージェントは経験を体力面でしか評価せず、施設警備や倉庫管理の求人ばかり紹介してきて的外れでした」。自衛官の方は「援護で来る求人は警備と運転職に偏りがち」。教員の方は「総合型はSIerの開発職を提案してきましたが、開発の実務経験がないため書類で落ち続けています」。
いずれも特化型の窓口に変えたあとで行き先が見つかっています。「紹介できる求人が少ない」と言われたとき、それは市場の答えではなく、経歴がまだ翻訳されていないだけの可能性があります。
3. 条件を先に固めすぎている
年収を下げない、転勤なし、残業なし、と条件から入ると、該当する求人は急激に減ります。特に40代以上では、年収維持を条件にすると選択肢がかなり狭まります。事例では40歳以上66件のうち46件で年収が下がっていました。条件が厳しいのではなく、起点が高いためです。
行き先はどう見つければいいですか?
事例で行き先が見つかった人がやっているのは、職種ではなく「自分の経験を必要としている相手」から探すことでした。手順にすると次のようになります。
- 担当してきた仕事を、相手側から見てみる。許認可をしていたなら、許認可を受ける側の企業がいます。補助金を審査していたなら、申請する側がいます
- 関わってきた業界を書き出す。福祉なら医療・福祉業界、産業振興なら地場メーカー、情報系ならIT業界。行き先はここに集中しています
- その業界の中で、職種を選ぶ。順番が逆になると、どれもピンときません
- 数字を持って行く。動かした金額、扱った件数、担当した年数。事例で条件が良かった人は全員これを書いています
「同じ制度の反対側に立つ」という選び方が、事例では最も条件が良くなりやすい形でした。県の再開発を認可していた方が不動産デベロッパーの開発企画へ移り、年収が220万円上がった記録があります。認可する側の知識は、認可を受ける側にとって価値になります。
所属別に見ると、行き先の傾向はありますか?
あります。同じ「公務員」でも、扱ってきた仕事が違えば行き先が変わります。自分の所属のものを見るほうが早く見つかります。
- 市役所から転職するなら?実際の転職先と向いてる仕事(事例68件)
- 県庁から転職するなら?実際の転職先と採用区分ごとの違い(事例44件)
- 国家公務員の転職先は?年代で結果が変わる理由と実際の事例(事例34件)
- 教員から転職するなら?実際の転職先と年収の現実(事例25件)
- 警察官から転職するなら?実際の転職先と年収の現実(事例20件)
全体の分布と選び方の順序は公務員の転職先はどう選ぶ?305件のデータで見る現実と選び方にまとめています。
注意点|「転職先がない」と感じているときに気をつけること
辞めてから探すと、選択肢はさらに減る
事例で条件が良かった人は、ほぼ全員が在職中に活動しています。在職中なら「決まらなければ動かない」という選択肢が残ります。辞めてから探すと、期限が生活費の側に移り、最初に出た内定を受けざるを得なくなります。年収が大きく下がった事例には「唯一の内定だったので他を見ずに決めた」という共通点がありました。
年齢が上がるほど、活動期間は長くなる
30代の事例は3ヶ月前後で決まっているのに対し、40代後半以降では6〜9ヶ月かかった記録が目立ちます。「見つからない」のではなく「時間がかかる」というのが実態に近い場合があります。期間に余裕を持って計画してください。
「潰しが利かない」を鵜呑みにしない
305件中237件が未経験職種へ移り、その48%が年収を上げています。潰しが利かないという評価は、少なくともこのデータとは一致しません。詳しくは公務員はスキルが身につかない?305件で見た実際に評価されたもので整理しています。
よくある質問
公務員は本当に転職先がないのですか?
事例305件は21職種・14業界に分散しており、最も多い職種でも全体の9.5%です。選択肢が無いのではなく、1つに集中していないため見えにくいというのが実際です。「公務員の転職先」という括りで探すと見つからず、自分の担当分野から探すと見つかります。
資格がないと転職先は見つかりませんか?
事例で「資格を取ってから動いた」という記録はありますが、それは行き先を決めたあとに、説明が足りない部分を補う目的でした。行き先を決める前に資格を取った例は出てきません。順序としては、まず方向を決めるほうが先です。
エージェントに「紹介できる求人がない」と言われました
複数の事例で、同じ経歴でも窓口を変えたら紹介される求人が変わっています。警察官の方は総合型では警備の求人ばかりでしたが、特化型では折衝力を法人営業の適性として言語化してもらい、IT企業へ移りました。最初の窓口の答えが市場の答えとは限りません。
地方に住んでいて求人が少ないのですが
事例には、東北に住んだまま完全リモートで首都圏の案件を担当している41歳の記録があります。「IT系はリモート求人が多く、住む場所を変えずに転職できます。地方在住を理由に諦めないでください」。職種によっては勤務地の制約が外れます。
どこから手をつければいいか分かりません
求人を見るのは最後です。まず自分の適性の方向をつかんでから、該当する所属別の記事で実際の行き先を確認するのが早い順序です。辞めるかどうかから迷っている段階なら、公務員を辞めたいけど転職先がわからない人へで考える順序を整理してください。
公務員のスキルの公式な定義と、転職で実際に評価された項目は公務員のスキルとは?人事院の57項目と転職で評価された経験304件にまとめています。

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