公務員にどんなスキルがあるのかは、これまで人によって答えが違いました。ところが2026年6月30日、人事院が「国家公務員スキル一覧 Ver.1.0」を公表し、公務で獲得できるスキルを57項目に言語化しました。職員41,287人へのアンケートをもとに作られた公式の一覧です。この記事では、その57項目が何なのかを整理したうえで、そのうち転職市場で実際に評価されているのはどれかを、姉妹サイトの事例304件と突き合わせて示します。
公務員のスキルとは何ですか?
2026年6月まで、公式な定義はありませんでした。いまは人事院が整理した「国家公務員スキル一覧」が基準になります。人事院の公表資料によれば、作られ方は次のとおりです。
- 職員アンケート:全府省職員が対象、回答は41,287人(2025年10月)。8つの業務区分ごとに118の仮説スキルを設定し、重要度を聴取
- 人事担当へのヒアリング:17府省庁の人材育成担当
- 有識者ヒアリング:15人
- これらを統合し、57の能力要素として言語化
目的は人材育成と研修の整備であって、転職支援ではありません。ただ「公務で獲得できるスキル」を国が公式に言語化した資料は、職務経歴書を書くときの土台としてそのまま使えます。「自分に何があるか分からない」という状態を、57項目の中から選ぶ作業に変えられるからです。
57のスキルはどう分類されていますか?
大きく「スキルセット」と「マインドセット」に分かれます。スキルセットは訓練と経験で積み上がるもの、マインドセットはその前提となる姿勢です。スキルセットはさらに3つに分かれます。
| カテゴリー | 定義 | 含まれるスキルの例 |
|---|---|---|
| 業務スキル | 実務を遂行するための基礎的・具体的なスキル | 文章力/資料作成力/情報収集・活用力/法令・制度理解/法・予算プロセス理解/統計力/機密保持意識/デジタルリテラシー |
| 対人スキル | 他人と関わりチームで働いていくためのスキル | ステークホルダーマネジメント力/合意形成力/交渉力/ファシリテーション力/ネットワーク形成力/傾聴力/リーダーシップ |
| 概念化スキル | 組織が直面する課題に対して解決策や戦略を考えるスキル | 課題発見・設定力/論理的思考力/有事対応力/政策設計/プロジェクト管理力/リスクマネジメント力/意思決定力 |
マインドセットは、責任感・誠実さ・公共性・正確性・緻密性といった普遍的な18項目と、学び続ける姿勢・アジリティ・レジリエンス・AIデジタル活用志向といった変化の時代に求められる9項目に分かれています。
なお人事院は「一人の職員に全てが求められるものではない」と注記しています。業務内容・分野・役職ごとに必要な組み合わせが違う、という前提の資料です。分類の考え方には、テクニカル/ヒューマン/コンセプチュアルというカッツ・モデルが参照されています。
このうち、転職で実際に評価されているのはどれですか?
ここからが本題です。人事院の一覧は育成のための資料であって、転職市場での価値の順番ではありません。そこで、姉妹サイトの公務員転職データベースに掲載されている304件の「公務員経験で評価されたこと」を読み、人事院のスキル分類に当てはめて数えました。
| 順位 | 該当する人事院のスキル | 件数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 1 | 法令・制度理解 | 79件 | 26% |
| 2 | 傾聴力・相互尊重性など対人系 | 46件 | 15% |
| 2 | 正確性・緻密性(マインドセット) | 46件 | 15% |
| 4 | 法・予算プロセス理解 | 37件 | 12% |
| 5 | 課題発見・設定力/政策設計 | 35件 | 12% |
| 6 | 文章力・資料作成力 | 34件 | 11% |
| 7 | 有事対応力・リスクマネジメント力 | 33件 | 11% |
| 8 | ステークホルダーマネジメント力・合意形成力 | 31件 | 10% |
| 9 | プロジェクト管理力 | 26件 | 9% |
※1件が複数に当てはまる場合は重複して数えています。分類は人事院のものではなく、当サイトが記述内容から対応づけたものです。
1位が「法令・制度理解」で、4件に1件が該当します。2位以下と比べても突出しています。次いで「法・予算プロセス理解」が12%。この2つは、公務員でなければ持てない知識です。民間で同じものを積んだ人がほとんどいないため、希少性がそのまま評価につながっています。
一方で意外なのは、「正確性・緻密性」というマインドセットが15%で2位に並んでいることです。スキルではなく姿勢が評価対象になっています。「規程やマニュアルに沿って正確に処理を進める姿勢」といった記述が、実際の評価コメントに繰り返し出てきます。
職務経歴書には、どう書き換えればいいですか?
人事院のスキル名をそのまま書いても、民間の採用担当には伝わりません。「法・予算プロセス理解があります」では、何ができる人か分からないためです。事例で実際に通った書き方は、次のように具体の業務に落とされています。
| 人事院のスキル名 | 職務経歴書での書き方(事例より) | 効く相手 |
|---|---|---|
| 法令・制度理解 | 「〇〇制度の審査基準を内側から知っている。申請を一度で通せる」 | その制度の対象業界 |
| 法・予算プロセス理解 | 「役所の予算サイクルと稟議の流れを知っている。提案の時期を外さない」 | 官公庁向け営業・コンサル |
| 合意形成力 | 「誰と誰の利害を、どういう条件で合わせたか」+動いた金額 | コンサル、企画部門 |
| 文章力・資料作成力 | 「複雑な内容を短くまとめる力」「会見資料の作成経験」 | 広報、法務 |
| 有事対応力 | 「災害復旧で判断した範囲」「何が起きたら誰に連絡し、どこまで止めるか」 | インフラ、セキュリティ |
| 正確性・緻密性 | 「止められない仕事を〇年間、事故なく回した」 | 情報システム、品質管理 |
共通しているのは、スキル名ではなく「担当した業務」と「数字」で書いていることです。人事院の一覧は自分に何があるかを見つけるための地図として使い、書くときは具体の業務に戻す。この2段階が、事例で通った人のやり方でした。
棚卸しの手順は公務員から転職するときの強みは?民間で評価される7つの経験、部署別の使いどころは公務員経験を活かせる仕事は?部署別にみる民間での使いどころにまとめています。
注意点|スキル一覧を使うときに気をつけること
これは育成のための資料であって、転職用ではない
人事院の目的は研修の充実と人材育成です。掲載順は転職市場での価値の順ではありません。上に挙げた集計のとおり、実際に評価されている項目は偏っています。全57項目を均等に埋めようとすると、かえって何ができる人か伝わらなくなります。
国家公務員向けに作られている
対象は国家公務員です。地方公務員や教員、公安職には、この一覧に載っていない固有のスキルがあります。人事院自身も「各府省・業務分野特有の知識、スキル、マインドは本一覧には未収録」と注記しています。自分の仕事がそこに含まれていなくても、価値が無いという意味ではありません。
スキル名を並べても選考は通らない
事例で書類が通っている人は、例外なく金額・件数・期間・規模のいずれかを書いています。「調整力があります」ではなく「何社と、いくらの案件を、どう合わせたか」です。一覧は自分の持ち物を確認するために使い、提出書類には具体に戻して書いてください。
よくある質問
国家公務員スキル一覧はどこで見られますか?
人事院のサイトで、概要と説明資料がPDFで公開されています。2026年6月30日に報道発表されたもので、バージョンはVer.1.0です。今後更新される可能性があります。
公務員に一番求められるスキルは何ですか?
人事院は順位をつけていません。「業務内容・分野・役職によって必要な組み合わせが違う」という立場です。一方、転職市場で実際に評価されたものを事例304件で数えると、最も多いのは法令・制度理解(26%)でした。「求められる」と「評価される」は別だと考えたほうが実態に合います。
地方公務員にもこの一覧は当てはまりますか?
一覧そのものは国家公務員向けですが、法令・制度理解、予算プロセス、合意形成、文書の正確性といった中核部分は地方公務員にも共通します。実際、事例304件には市役所・県庁・教員・公安職が含まれており、上位に来た項目は所属を問わず出てきています。
公務員はスキルが身につかないのではないですか?
「民間でそのまま使える職業スキル」という意味では、異動で専門が途切れやすい面はあります。ただ事例305件のうち237件(78%)が未経験職種へ移り、その48%が年収を上げています。詳しくは公務員はスキルが身につかない?305件で見た実際に評価されたもので整理しています。
自分がどのスキルを持っているか分かりません
担当してきた業務ほど当たり前すぎて、価値が見えなくなります。57項目を上から確認していくより、自分で最初から最後まで回した仕事を3つ書き出し、そこに当てはまる項目を選ぶほうが早く進みます。適性の方向をつかんでから探す場合は、下の診断が使えます。

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